コラム・夏 協同の心を継ぎ紡ぐ「組合製糸」と「集落営農」

協同組合教育のあり方に関する研究会を全中・家の光、各地の実践者が上伊那の地に集い「大転換期の協同組合教育をどうすすめるか」をテーマに意見交換をした(内容は後日開発機構HPに掲載予定)。JA上伊那 牛山喜文前専務理事(第60回農協人文化賞受賞)より実践報告いただいた。

牛山さんから「上伊那地域は、明治時代養蚕が盛んだったが、製糸会社の買い叩き・不当取引に悩まされていた農家が、産業組合法以前に自らを守る手段としてお金を出し合い製糸を開始。やがて、産組法のもとで組合製糸龍水社が誕生し、農家所得の向上に寄与した。養蚕・組合製糸は国際貿易の中で劣後し衰退したが、今日の協同の心を実践するのは上伊那全地域をカバーする48(うち法人44)集落営農だ。上伊那は共に助け合い自分たちの地域・農業は自ら守る協同の心が息づいている。」との報告がされた。

中世以降、団体的自治は日本社会の基層をなすものと言われるが、団体的自治の文化(協同の心)が、村社会・農業の営みを支えてきた。その実践が上伊那地域の組合製糸龍水社であり、今日の集落営農で、協同の心を継ぎ紡ぐものだ。協同組合理論を学ぶことはもちろん重要であるが、実践を通じた協同組合教育こそ日本社会の基層をなす協同の心を覚醒させることに繋がるとの確信を得た研究会であった。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・春 シンギュラリティー

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、AI(人工知能)が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるということ。AIの権威であるレイ・カーツワイル博士が提唱した「未来予測の概念」で、少なくとも2045年までには到達するとし、2045年問題と言われている。

AI、IoTなどデジタル技術が、自動運転や家電製品など具現化しつつあり、もはやSFの世界から身近な存在として感じることのできるようになった。技術のもたらす生活の利便性の向上や産業の生産性向上、経済成長に関して期待は大きい。しかし、懸念もある。テクノロジーが雇用を奪うこと。人間の労働者は機械にとって代わられる。製造、サービス、そして医者・公認会計士・法律家とて事例の積み重ねと法律上の判断となれば置き換わる可能性がある。

これからの時代、人類は何をし、生きていくのか。人間が人間として生きていくために、デジタル技術が人間の補完的関係であってほしい。となれば、残る仕事は、機械に代替できない、人間にしかできないと言われる創造性(課題発見)、融合・調整、心・精神・思考に係ることなのかもしれない。

とはいえ、機構も平成30年度事業計画の中で、デジタル技術活用について農業分野等における活用可能性などの調査研究や事業上の活用にも着手していきたい。会員の皆様には本年度も人材サービス、調査研究事業の利用について宜しくお願いします。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・冬 新年新年“戊(つちのえ)戌(いぬ)”の年は、分岐点の歳

平成30年“戊戌(つちのえいぬ)”の年を迎えました。 今上天皇の退位が来年4月30日、翌日5月1日新天皇が即位する。改元もこの時となる見込みで、平成も30年、本年が区切りの年となります。

戊(つちのえ)の「植物の成長が絶頂期にある」と、戌(いぬ)の「草木が枯れる状態を表す」というと比和の関係、今まで頑張ってきた事が、見事に花開き、頑張ってこなかった人は現状維持からより悪い状態になるという、所謂、結果が明確になる年、『分岐点』と言われています。

農業関連にとっては、本年50年近く続いた生産調整が見直され国の関与が大幅に後退します。 農協改革も集中実行期間の最終年です。不安・懸念はマックスですが、切っても切れない関係だった「水田と農協」の分岐点、十干十二支的に言えば、結果が明確になる年なのかもしれません。

強いられる改革よりも自ら取り組んできた改革こそが結果であるとしたい。「水田と農協」持続可能な姿として次代につなげていく。その一助となるよう開発機構も取り組んでいきたいと思います。「地域農業の振興・地域の活性化・JAの革新をサポートする研究開発機関」として、本年も宜しくお願いいたします。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・秋 「制度としての農協」そのくびきからの解放

北海道大学名誉教授 太田原高昭先生が8月にご逝去された。日本協同組合学会、日本農業経済学会の会長を務めるなど、農協とともに半生を奉げた農協研究者の重鎮である。

太田原先生が、最後に手掛けた著書「新・明日の農協」の中で、農協は自主自立の協同組合でありながら農政の補助機関であるという矛盾した存在。 米政策を担ってきた農協が、いわゆる減反政策の廃止とともに規制改革会議の農協改革の提言は、農政にとっての農協の必要性が終わったとの認識から来たもの。 農協にとっても一つの時代が終わったことは明らかで、政府の農協改革に対し、主体的な自己改革で対置するが、自主自立の協同組合として次の時代を展望する見取り図を得ることが自己改革を確かな基盤に置くことになるとしている。

今では太田原先生の遺言となってしまったが、その言わんとするところは、政治に依存することなく協同組合らしく共通の目的・目標に向かって組合員と共に悩みながら知恵を出し合い明日の農協を“共創”していくことではないか。

当機構にも太田原先生の愛弟子が在籍しているが、太田原先生のご冥福をお祈りしつつ、協同組合の歴史を振り返り、原点を見つめて、現場課題を組織化していくことこそ協同組合であるとの認識を新たにした。

(常務理事 浦野邦衛)


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