コラム・冬 新年“己亥”の年『新たなステージに向けた準備期間』

平成31年“己亥(つちのとい)”の年を迎えました。5月以降新元号の年、平成の終わりの年です。

振り返れば平成のはじめは経済的にはバブル経済の終焉と以降の失われた20年と称されるマイナス成長・低成長・デフレ経済、リーマンショック、そして高齢・人口減少社会、格差社会の顕在化、そしてグローバル化・規制緩和など新自由主義の台頭、 そして近年、トランプ政権誕生、英国EU離脱、仏国「黄色いベスト」運動、EU等右派勢力拡大など、その弊害による生活破壊への反発の動きが新しい潮流として生まれつつあります。 グローバリゼーション・国家主権・民主主義このトリレンマをどう調整し、軸足をどこに置くのか。明らかに行き過ぎたグローバル経済は副作用が大きく限界にきています。 国連が持続可能な開発目標SDGs<誰も置き去りにしない>国際社会共通の目標を決定しました。更に国連の「小農宣言」、来年からの「国連家族農業の10年」など国際社会はその是正に動いています。 日本はこの小農宣言採択を棄権しました。日本政府・官邸農政、何をか言わんやです。怒りすら覚えます。

“己亥(つちのとい)”は守りの年ともいわれますが、植物の生命の力が種子の中に閉じ込められている状態と言われています。 平成31年 西暦2019年は、JA長野県長期ビジョン新3か年計画のスタート年、政府の「農協改革集中推進期間」終了5月、新中央会組織変更9月などを迎えますが、種子に宿した協同組合思想DNAを引き継ぎ、新たなステージに対応する組織・事業を育て、繁栄していく起点の年です。

開発機構の使命たる農業を基盤とした豊かな地域社会に貢献するため、農業労働力、AI・IoTなどスマート農業への対応など新たなステージに向けて取り組んでまいりますので、本年も宜しくお願いいたします。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・秋 田園回帰への覚醒 ~信州エクスターンシップ事業の成果~

本年3回目となる信州エクスターンシップ(地域滞在型インターンシップ)が、8月下旬に長野地域で首都圏大学8大学、県内大学2大学合計37名の1~3年次学生が参加し、16企業・行政・団体を訪問し、職場見学・体験、社員等インタビューに取り組んだ。首都圏集中が進む中で、地方で暮らし・働くという選択肢拡大ためのキャリア教育を狙いとしている。

開発機構は、山間地域である小川村に協力をいただき、①小川村の概要と交流・移住・定住施策 ②㈱小川の庄(地域活性化・高齢者雇用)でのおやき作り・そば打ち体験 ③地域おこし協力隊員・村職員へのインタビューというプログラムに8名の学生が参加した。

大学を卒業し、首都圏又は近隣の企業に就職し定年を迎えるとのキャリアイメージしか描けない学生達は、特に地域おこし協力隊員へのインタビューで、その生き方・働き方、人生の選択肢に関してインパクトがあったようだ。また、小川村は「暮らす村・定年のない村」との地域ブランディングに取り組んでおり、村内での起業(コミニティービジネス)支援や子育て・居住・古民家再生支援など暮らしにかかわる個人支援が充実している。この施策の手厚さにも驚いたようだ。最終日に8チームに別れ成果発表会が行われ、小川村プログラムに参加した学生は7チームに混じったが、各チームの中に小川村で体験した要素が入っており、あるチームは農村で暮らし・働くことについて真正面に受け止め提案する内容まであった。学生のキャリア選択の拡大に確実に結び付いたようだ。

農村で暮らし・働くこと、その異文化体験こそ田園回帰への覚醒に繋がる。10月に行われる村祭りでは、引灯篭の引手として学生が参加する。関係人口の始まりである。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・夏 協同の心を継ぎ紡ぐ「組合製糸」と「集落営農」

協同組合教育のあり方に関する研究会を全中・家の光、各地の実践者が上伊那の地に集い「大転換期の協同組合教育をどうすすめるか」をテーマに意見交換をした(内容は後日開発機構HPに掲載予定)。JA上伊那 牛山喜文前専務理事(第60回農協人文化賞受賞)より実践報告いただいた。

牛山さんから「上伊那地域は、明治時代養蚕が盛んだったが、製糸会社の買い叩き・不当取引に悩まされていた農家が、産業組合法以前に自らを守る手段としてお金を出し合い製糸を開始。やがて、産組法のもとで組合製糸龍水社が誕生し、農家所得の向上に寄与した。養蚕・組合製糸は国際貿易の中で劣後し衰退したが、今日の協同の心を実践するのは上伊那全地域をカバーする48(うち法人44)集落営農だ。上伊那は共に助け合い自分たちの地域・農業は自ら守る協同の心が息づいている。」との報告がされた。

中世以降、団体的自治は日本社会の基層をなすものと言われるが、団体的自治の文化(協同の心)が、村社会・農業の営みを支えてきた。その実践が上伊那地域の組合製糸龍水社であり、今日の集落営農で、協同の心を継ぎ紡ぐものだ。協同組合理論を学ぶことはもちろん重要であるが、実践を通じた協同組合教育こそ日本社会の基層をなす協同の心を覚醒させることに繋がるとの確信を得た研究会であった。

(常務理事 浦野邦衛)


コラム・春 シンギュラリティー

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、AI(人工知能)が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるということ。AIの権威であるレイ・カーツワイル博士が提唱した「未来予測の概念」で、少なくとも2045年までには到達するとし、2045年問題と言われている。

AI、IoTなどデジタル技術が、自動運転や家電製品など具現化しつつあり、もはやSFの世界から身近な存在として感じることのできるようになった。技術のもたらす生活の利便性の向上や産業の生産性向上、経済成長に関して期待は大きい。しかし、懸念もある。テクノロジーが雇用を奪うこと。人間の労働者は機械にとって代わられる。製造、サービス、そして医者・公認会計士・法律家とて事例の積み重ねと法律上の判断となれば置き換わる可能性がある。

これからの時代、人類は何をし、生きていくのか。人間が人間として生きていくために、デジタル技術が人間の補完的関係であってほしい。となれば、残る仕事は、機械に代替できない、人間にしかできないと言われる創造性(課題発見)、融合・調整、心・精神・思考に係ることなのかもしれない。

とはいえ、機構も平成30年度事業計画の中で、デジタル技術活用について農業分野等における活用可能性などの調査研究や事業上の活用にも着手していきたい。会員の皆様には本年度も人材サービス、調査研究事業の利用について宜しくお願いします。

(常務理事 浦野邦衛)

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