研究レポート きのこの生産・消費量の動向

きのこの生産・消費量の動向と、新たな販売方法の展開に向けて

受給きのこの 近年のきのこ価格は全国的に安値傾向にあり、農家の経営に影響を与えています。そこで、きのこの需給関係がどのような状況にあるのか、農林水産省『特用林産物生産統計調査』や、総務省『家計調査』をもとに調べてみました(表参照)。

まず生産量についてですが、2015年は36万3千トンで、1985年と比べると2.8倍に増えています。つぎに家計消費量をみると、15年は33万2千トンで、85年比で3.2倍となっており、家計消費の増加率>生産量の増加率となっています。それにもかかわらず、価格が低下しているということは、需給バランスが原因ではなく、生産方法の変化(効率化)や流通・販売面(特定の実需と結びついた安値競争)などの影響が大きいと推察されます。

また、別の角度からきのこの生産量と家計消費量の関係をみていきます。両者の差を加工・業務用需要量としてその割合を推計すると、85年には19.1%で、15年には8.3%になっています(輸出入や流通上のロスを除く)。 他の品目の加工・業務用割合は、野菜で約56%、果樹は約45%となっているため、きのこは低い割合と言えます。

以上から、従来の家計消費向け主体の生産販売では価格を支えきれなくなっており、需要の拡大が見込まれる業務・加工用と組み合わせることで価格を安定させられる可能性があります。そこで当機構では、本年度、JAと協力して食品業者などにアンケート調査を行い、①需要先の発見、②規格・品質における加工適性の検討、③一次加工、流通形態の検討を行っていきます。

(研究員 坂知樹)


研究レポート ワインパミスの利用

ワインの製造過程でできるぶどう由来の新食材 「ワインパミス」の利用利用について

ワインパミス原料長野県は日本を代表する良質なワイン生産県として、醸造に用いるぶどう生産量は、全国1位(6,363t:平成27年特産果樹生産動態等調査)で、その土地ならではの個性あるワインを醸造しています。一方、醸造廃棄物の循環利用も環境に配慮した取り組みの推進が求められています。

パミスを利用した試作品当機構ではその醸造廃棄物の利用について研究開発を行ってきましたので、その利用法についていくつか紹介します。

ワインの搾りかすのことをパミス(pomace)といいます。主に水分、ぶどう果皮、種、梗からなり、その多くが肥料、または産業廃棄物として処分されています。しかしこのパミスには、ポリフェノール類をはじめ、さまざまな機能性成分が含まれています。

  1. 酒の原料蒸留酒(グラッパ)製造
    ぶどうの搾りかすをさらに発酵して作られたアルコールを蒸留して作られた酒をイタリアでグラッパと呼びます。フランスのマール、バルカン半島のラキアなどもこの仲間です。蒸留酒ため、アルコール度数は高めです。
  2. 家畜用飼料
    羊、牛、豚など、家畜の飼料に混ぜて使用されることもあります。豚の飼料に混ぜたところ、排泄物由来の悪臭抑制も有害菌数抑制などの効果が期待できるとの報告もあります。
  3. 食品に再加工
    パミスからペースト、ジャムなどの加工品を作るなどの工夫もされています。さらに種からグレープシードオイルを絞ったり、ブドウ果皮から食用色素も作られています。
  4. 機能性食品の原料
    パミスに含まれるオレアノール酸には抗メタボ効果、抗蝕効果があることが明らかにされています。パミスエキスは機能性食品素材として製品化されています。
  5. その他
    パミスに含まれているプロアントシア二ジンに注目した化粧品の開発や、ぶどう果皮色素を使った染料の開発も行われています。

(統括研究員 大熊桂樹)


研究レポート 日本協同組合学会(第37回大会)参加報告

日本協同組合学会(第37回大会)シンポジウムの様子 9月22日から24日の3日間の日程で開催された日本協同組合学会の第37回大会(徳島大会)に参加したので、大会シンポジウムの内容をご紹介します。

日本協同組合学会は、研究者と実践家の協力によって協同組合運動のあり方について学術的に研究することを目的としており、研究者だけでなく、各種協同組合の第一線で活動中の実践者が多数参加しています。大会シンポジウムでは、『新たな社会観の構想と非営利・協同のネットワークの課題を考える』をテーマに、第1報告「コミュニティ媒介者としての協同組合の位置と役割-協同組合実践・理論の課題」、第2報告「協同組合間協同:理念を実践する」の2報告と、協同組合間協同の実践に向けて、実践者を交えたパネルディスカッションが行われました。

第1報告では、①協同組合の認知度の向上、②協同組合とコミュニティ(地域づくり)、③協同組合間協同、④協同組合と教育(学びあい)の4つの視点から論点整理が行われ、地域の暮らしから生まれた課題・ニーズに対して、各種協同組合が業種の壁を越えた協同ネットワークを構築することが提起されました。

第2報告では、これまでの協同組合間協同を①産消提携タイプ、②業務提携タイプ、③事業連携タイプ、④地域連携タイプの4つの形態に分類した上で、新たな形態として農協組合員が生協組合員に、生協組合員が農協組合員になって、例えば一枚の組合員カードで農協・生協間の相互利用を可能とする「組織連携タイプ」を促進することが提起されました。最後に座長から、JAが協同組合間協同を進める上での一つの方向性として、非農家の地域住民も参画しやすくするために小さな協同組織を外部に作ってネットワーク化することが提起されました。こうした方法は、協同組合の認知度や活動への参画意識の向上に繋がると考えられることから、「なくてはならないJA」に向けた取り組みを進める長野県においても有効であると感じました。

(上席研究員 山内 哲人)


研究レポート モンドラゴン協同組合企業への視察研修

モンドラゴン協同組合本部 家の光海外協同組合視察研修に参加したので、モンドラゴン協同組合企業での研修内容をご紹介します。

モンドラゴン協同組合は、労働者協同組合の集合体の名称で、101の協同組合から構成されています。 その内訳は、工業、信用事業、小売事業、農業、教育分野、研究・開発などを行う協同組合と、国外には128の子会社があり、グループ全体で約7万5千人の従業員がいます。 組合の使命を端的に言うと「労働者の地位向上」、「仕事の創出」、「教育の重視」です。その取り組みをみると

本部広報担当のアンデル氏 ①それぞれの協同組合で働く従業員は組合員であり、平等に1人1票の議決権を持つ組合の所有者である。
②101の協同組合の間で従業員の再配置・調整を行い、雇用を維持し続けている。また、利益についても小グループ内で一定割合を再配分し、余剰金は従業員に分配している。
③モンドラゴン大学を運営し、高等教育の実施、職人の養成、協同組合教育を実施している。
などがあげられます。

こうした自主・自立・民主的運営、教育活動のほか、組合間の協同や、地域社会への貢献も積極的に行っています。これらの取り組みはICAの協同組合原則に記されているものでもあり、JAグループの役割を改めて考えさせられる良いきっかけとなりました。

(研究員 坂知樹)


研究レポート 特許申請「天然色素抽出液の製造方法」

本発明は天然色素抽出液の製造方法に関し、果実の果皮を利用して天然色素抽出液を製造する方法で、信州大学との共同で特許出願をいたしました。

りんご、ぶどう、柿などの果実の果皮には、天然の色素が含まれているから、この色素を利用して加工食品を着色するといったことが行われています。
天然色素抽出液の製造方法は、果実の果皮に酵素を添加し、酵素反応を利用することでポリフェノールなどの高い物質を効率的かつ容易に色素を抽出することができます。
天然色素抽出液は、食品素材としてそのまま利用することができ、ジャム等の着色に利用する他、ヨーグルト等の他の食品に添えて使用するといった種々用途に利用することができます。(特願2016-57797)

りんごを使った製造工程例

(統括研究員 大熊桂樹)


研究レポート 飼料用米利用普及研究会の開催

飼料用米利用普及研究会 平成28年11月21日伊那市JA上伊那本所において、飼料用米利用普及研究会を開催しました。南信飼料用米利用普及協議会(事務局:当機構)の主催により、飼料用米の利用状況やコスト分析、飼料用米を活用した乳製品など新たな食品のブランド化について研修いただきました。

研究会では「上伊那地区の情勢報告」として、上伊那農業改良普及センターからJA上伊那管内の酪農家を事例に、飼料用米を実際に給餌したことによるコスト削減効果や課題について説明をいただきました。
また、JA上伊那と伊那酪農協から本年度の飼料用米の作付や利用実績などについての報告をいただきました。

国学院大学非常勤講師の神山氏からは「酪農における飼料イネ・飼料米利用の現状と展望」と題して、全国的な飼料用米などの利用状況の報告をしていただきました。
また、三重県の「大内山牛乳」や新潟県の「魚沼うんめぇジェラート」の事例などを基に、米を利用した乳製品としてブランド化するためには地域全体で飼料用米の給餌に取り組む必要があることなどを説明していただきました。
続いて、農研機構の恒川氏からは「稲WCS・飼料用米の生産・利用の経済性と取り組み上の課題」と題して、詳細なデータを基にした稲WCSと飼料用米のコスト比較や、流通経費の削減効果が大きいため地域内での利用が重要であること、耕畜連携は地域全体での経済的効果があることなどについての説明をいただきました。

南信飼料用米利用普及協議会では、「米活用畜産物等ブランド化推進事業」の一環として、飼料用米を与えた乳牛の生乳を使用した乳製品の販促PRを行うため、平成29年3月に開催されるフーデックスジャパン2017への参加も予定しています。 今後も引き続き、飼料コストの削減や乳製品のブランド化などによる収益力の向上に取り組んでいきます。

(主席研究員 山内 哲人)


研究レポート 信州エクスターンシップ受け入れの効果

8月28日から9月3日にかけて信州エクスターンシップ(長野県主催)が開催されました。 信州エクスターンシップとは首都圏の大学生を対象に、長野県内の企業で職業体験を行うとともに、就職や社会人になることへの意識を高めることを目的とした事業です。

体験先の1つである農業コースでは、JA長野中央会が事務局となり、JAグリーン長野、JAながの、農協観光を中心に学生20名を受け入ました。体験内容は、農産物の収穫・選別、Aコープ・直売所での業務体験、市場・研究所見学などです。
そして当機構は、農業コースに参加した学生に対してアンケート調査を行ったので、結果の一部を紹介します。

信州エクスターンシップアンケート 研修を通じた農業のイメージの変化を「良くなった」~「悪くなった」の5段階で評価してもらうと、「良くなった」との回答者が14名、「少し良くなった」は6名でした。 同様に、JAのイメージの変化では、「良くなった」が16名、「少し良くなった」は4名となり、参加者全員の農業やJAのイメージが向上し、明確な効果が現れました。
このように農業やJAのイメージが変わった理由としては、「JAに対して大雑把なイメージしかなかったが、研修を通じてJAの取り組みを知ることで安心感が生まれ、イメージがよくなった」、「農業は大変そうだが、地域とのつながりが強く、やりがいのある仕事だと思った」などです。
また、研修を通じて就職先としてJAなど農業に関わる仕事に就いたり、農業をしたいと思いますか、という質問に対しては、「そう思った」と「少しそう思った」の合計回答者数が16名でした(右図)。 したがって、学生がJAや農業に関わる仕事へ興味を持ち、就職に結びつけるためにインターンシップは有効な活動であると考えられます。

(研究員 坂 知樹)


研究レポート 「発酵ジャムとまと」の商品化

植物性乳酸菌を用いた「発酵ジャムとまと」は、農林水産省「平成26年度緑と水の環境プロジェクト事業」において信州大学工学部(長野市)、デイリーフーズ㈱長野工場(坂城町)と当機構3者により開発した商品です。

植物性乳酸菌を用いた「発行ジャムとまと」 原料のトマトは、長野県野菜花き試験場(塩尻市)が2009年に開発した加工用トマト「リコボール」を使用しました。「リコボール」は抗酸化作用や血糖値を下げる効果があるリコペンが、通常の加工用トマトの1.5倍から2倍程度多く含まれています。

発酵ジャムは、トマトを加熱殺菌後に冷やして乳酸菌とリンゴ酸を加え、温度を一定に保った状態で3日間ほど発酵させます。その後、砂糖を加えて煮詰めます。トマトの酸味と甘みを残しながら、素材が持つ以上のまろやか風味は、乳酸菌発酵による風味がもたらすものです。食パンと共に召し上がっていただくのはもちろん、チーズや天然酵母パンなどの発酵食品との相性も良く、奥行きのある味わいは、ジュースやゼリーに、またサラダドレッシング、ガレットやピザ、パスタなどのソース等、料理やスイーツにも適しています。

「高リコペン」と「乳酸菌発酵」というシーズを組み合わせた6次産業化、新商品と新事業の創出、それらを通じて生産振興を図る方策が明らかにされた事業となりました。

(統括研究員 大熊桂樹)

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